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ドキュメンタリー「素敵な宇宙船 地球号」    ADってどんな仕事?
ADと一言でいっても、番組制作会社の制作ジャンルによって実際の業務は様々。実務レベルでの番組制作に携わるADは、「その会社がどんな番組を作っているか」によってまったく違う仕事の性質を持つといっていいだろう。ここではドキュメンタリー番組制作会社(株)パオネットワークで『すてきな宇宙船 地球号』のADに携わる服部隆志さんにインタビュー。ドキュメンタリーならではのADの仕事についてきいた。服部隆志さん写真僕がドキュメンタリーを作りたいと思ったのは、17~18歳のときにテレビで見たボスニア・ヘルツェゴビナ紛争がきっかけだったのかな、と思います。もちろん、それだけが志した理由ではないのですが、今から考えると、この仕事を志す発端になっていますね。テレビで報道を見た記憶から、後々「硬派で社会的な番組を作ってみたい」という気持ちがめばえたわけです。

日本から離れた異国の地で凄いことが起きている!というのが衝撃でした。ニュース映像自体の衝撃もさることながら、各民族や国連軍が入り乱れての内戦というニュースの事件性にも興味が引かれました。決してキナ臭いことが好きというのではありませんが、好奇心からでしょうか、このことに強く興味を持ったのです。

これが理由で、というわけではありませんが、学生時代はバックパッカーとしてこのボスニアやも含めてヨーロッパや中東を旅しました。歴史の教科書やテレビでしか見たことのないこういった土地を実際に見てまわりたかったからです。学生でしたからもちろん貧乏旅行で、2カ月ほどの旅を3回しましたね。初回はスペイン、モロッコ、フランス。2回目はチェコやスロバキアを経てクロアチア、ボスニアにも。3回目は中東--ヨルダン、イスラエルからギリシャ、ちょっと離れてウズペキスタンへ。

服部隆志さん写真クレジットカードでキャッシングしながらまわったので最後の方はだんだん使えるカードが無くなってきてハラハラしました(笑)。このときの思い出で印象に残っているのは、ボスニアで地元のおじさんたちがたむろっているところに混ざり、内戦中の話しを聞かせてもらったことですね。「トンネルを掘って物資を運んだんだぜ」と、自慢気に語るおじさんの表情が忘れられません。そう、僕が高校生の時にテレビでみたあの内戦に参加していた人々だったのです。

学生時代は出版社でアルバイトしていたこともあり、マスコミに就職できれば…なんて思っていたのですが、実際に就職活動をするにあたって考えた結果「テレビでドキュメンタリーを作りたい!」という気持ちが強くなりまして。日常では行けない世界を「取材」という形でそこへ実際に行き報道する…こんな体験ができる仕事に就ければ、というのが志望動機ですね。

制作会社のことはよくわからなかったのでネットを使って調べました。それでATPのホームページを見つけて、そこから各制作会社のホームページを見ていったのです。ドキュメンタリー番組を作っている会社はどこだろう?と探してパオネットワークを見つけました。

まずはエントリーして、そこから小論文がありましたね。ここでは小泉チルドレンに関する論文を書きました。特に難しい論文というものではないです。ニュースを見ているか、新聞を読んでいるかという一般常識が試されるものだと思います。これから制作会社を受ける学生なら最低限新聞は読んでおいたほうがいいですね。試験に出る・出ないはともかく「雑学」という点で見ると、実際に就職してから企画を立てる段階や、リサーチの過程で絶対役に立ちます。面接ではドキュメンタリーを作りたいということをアピールしました。実は就職活動をした一番最初の会社がパオネットワークだったのです。いきなり内定がとれてしまったこともあり、「よし、もう他はいいや!」と就職を決めましたね。

最初に受けた企業で見事内定を勝ち取り、そのままADとして就職へ。ちなみに電話応対や名刺交換などの基本ビジネスマナーはATPの新人セミナーで学んだのが役立ったそう。初日から実践で新人ADとしての業務が始った。
服部隆志さん写真
▲朝から電話をしまくる日もあるとか
4月入社だったのですが3月の下旬から馴れるために出社してましたね。最初にやった仕事はルーマニアで取材したビデオを翻訳する仕事。あ、もちろん僕がするのではなく、訳せる学生や日本に居住しているルーマニアの人を集めて日本語にしてもらう、というものです。毎日大勢ルーマニアの方が来たのでにぎやかで楽しかったですよ。女性は美人でしたし(笑)。

そして4月になり、新人としてスタートを切った矢先にいきなりロケで三重、和歌山の熊野古道に行ったのが記憶に残っています。交通や宿の手配…というのは本来やらなきゃいけない仕事なのですが、このときはホントに連れて行ってもらっただけ。なぜかというと、峠道を登るのにカメラに使う「三脚担ぎ」をする人員が必要だったようで…。肩に“三脚筋”ができたくらいです!

ドキュメンタリー番組のADという仕事は事前のリサーチが多いんですよ。番組を作るに当たってはドキュメンタリーという性格上、取材に行くことがメインになりますが、スムーズに取材するためにわれわれADが事前に情報をまとめておく必要があります。取材の対象者やテーマについての情報はもちろん、遠方への取材であれば地図の用意やクルマなどの手配も必要です。海外取材であれば現地のコーディネーターから上がってきた情報を元にさらに詳細を調べたりします。

また、番組で扱う毎回のテーマが違いますから、その度に情報収集しますね。先月はサブプライムローンについて、今月は水資源について、とか。テーマや全体の構成、企画はディレクターから降りてくるんですが、テーマについて知識がないとリサーチもできないですからね。また、こういうことで信頼を得ていけばデータの精査などの仕事も任せてもらえるようになるし。学生時代の「勉強」とは違いますが、こうやって様々なテーマに詳しくなっていけるというのがこの仕事の喜びのひとつですね。

インプットだけでなくアウトプットもしなくちゃ、と最近では考えています。企画はプロデューサーやディレクターが立て、局にプレゼンして通ったものが、ADに降りてくるのですが、最初の段階でゼロから「こういう企画はどうですか?」なんて提案できるようになりたいです。もしくは誰かの提案したテーマでもいい、局に提案できるくらいまで詳細をリサーチしてネタを育てられれば…なんて。残念ながらバタバタしているうちに企画が決まって降りてくることが多いんですけど。

実際のリサーチ作業としては「電話攻勢」が中心。本やネットで下調べをしたら、朝から晩まであちこちに電話して調べまくります。ADの段階だと取材といっても現地に赴くのは稀で、電話でのリサーチが圧倒的に多いです。

今年2年目を迎える服部さん、充実過ぎるほど過密なスケジュールを送りながら、次回の企画についての勉強もかかせない。デスクの回りには資料となる書籍や雑誌がいっぱいだ。
服部隆志さん写真
▲デスク回りにはいつも資料が一杯
今はまだ2年目ですからね。覚えることもあって、いっぱいいっぱいです(笑)。今後の夢としては、やはりディレクターになって自分の企画したドキュメンタリー番組をりたいです。それと最近、やはり語学を勉強しておけば良かったな、と痛感します。学生時代の海外放浪では、なんとか日常会話が通じた程度。しかしそれも、財布を盗まれたとき、周囲にそれを説明しようとしたんですが全然通じなかったという苦い経験があるんです。今、仕事上で英語を使えるかというと、とてもそんなレベルじゃない。近頃では真剣に、いつかは留学して語学を学びたい…なんて思っているんですけど、えー、今の状況では無理だよなあ、と(笑)。


服部隆志さん写真
服部隆志さん
アシスタントディレクター
株式会社パオネットワーク
ドキュメンタリー「素敵な宇宙船 地球号」
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