緊急企画! プロデューサー 橋本芙美さんインタビュー (株)共同テレビジョン/プロデューサー “いかに楽しんでもらえるか”そのポイントを絶対に忘れないで番組をつくり続けたいです。 初の単独プロデューサーとして連続ドラマ「絶対彼氏」(フジテレビ)をてがけ、続く「メイちゃんの執事」(フジテレビ)では「ATP賞テレビグランプリ2009」新人賞を受賞。 その後も話題のドラマを次々にプロデュースし、「フリーター、家を買う。」(フジテレビ)では「ATP賞テレビグランプリ2011」グランプリを受賞した。 その他の主なプロデュース作品には「インディゴの夜」(東海テレビ)「泣かないと決めた日」(フジテレビ)「マルモのおきて」(フジテレビ)などがある。
プロデューサーされていた「フリーター、家を買う。」がATP賞グランプリを受賞、東京ドラマアウォードではプロデュース賞も受賞されました。
「作品賞」という形でいくつもの賞をいただけたことは、本当に嬉しいことでみんなで喜びをわかち合いました。
さらに個人でも賞をいただき、まだまだ自分の力ではなく、関わった全ての方々に本当に感謝ですね。
プロデューサーとしてキャリアを積むごとに、実務的に多少はうまくやれるようになったこともあります。
でも、1つのドラマは、放送局のプロデューサーや監督、脚本家、現場スタッフ、キャストなど本当にたくさんの方々によって作られていますので、
みんなの力があってこそですし、私個人としてはまだまだこれからだと思っています。
賞とは別に、放送中から大きな反響をいただけたことはとてもありがたかったです。
学生時代にこの仕事を志すにあたって「この作品を見て元気になりました」と、言ってもらえるものをつくりたいと思っていたので、
まさにその声をいただけたことが一番嬉しかったですね。
「社会派のドラマもつくりたい」二年前にATP賞新人賞を受賞された時に、そのように仰っていましたが、「フリーター、家を買う。」は思いを実現されたドラマなのでしょうか。
この作品に参加させていただいて、ある意味で夢が1つかなったと言えるかもしれません。
何を持って「社会派」というかですが、有川浩先生の原作「フリーター、家を買う。」は現代社会の抱える「今」の問題に鋭く切り込んでいました。
その話題の原作を脚本の橋部敦子さんがドラマとしてさらに深めてくださり、さらにたくさんの素晴らしいスタッフ・キャストのおかげで、
多くの反響をいただける作品となりました。
「フリーター、家を買う。」は家族の群像劇的な要素もあって、見る方の年代によって、主人公以外にもヒロインや、お父さん、お母さん、お姉さんなど
共感するポイントがそれぞれにあって、それぞれの立場でも感情移入して楽しんでいただけたのかなと思います。
この記事を読んでいただいている学生の皆さんにとっては、まさに主人公が一番近い年代で、彼の姿を通じて様々な思いを抱いたかもしれませんね。
私自身もそうでしたが、就活ってどうすれば成功するのか、とことん悩んで迷うと思うんです。
そんな時、この主人公が一度ドロップアウトしながらも一念発起して立ち上がっていく姿を見たら、勇気を与えられるメッセージとなれるのかもしれません。

「社会派ホームドラマ」と銘打って、今伝えるべきメッセージがここにあると信じて、
みんなで意欲的に取り組んだ作品でしたが、当初は「地味なホームドラマ」という印象もありました。
放送前は、視聴者の皆さんにどう受け入れてもらえるのか正直不安もありました。
それでも日常のちょっとした喜びや悲しみ、痛みなどを丁寧に描いたことで、
たくさんの方々の心にそれぞれの形で響いたものがあり、
「もっと家族を大事にしようと思った」といった声が届くようになりました。
そういった共感を得られたことで、制作している我々も改めて気付いたり学んだりすることがありました。
先ほどの繰り返しになってしまいますが、このドラマを通して、見ていただいた方々から
「明日も頑張ろうと思えた」などの感想をもらえたこと、そんな経験をさせてもらえたことが、
私にとってはすごく大きなことでした。
普段なかなかドラマを見ないという橋本さんのお父さんも、「フリーター、家を買う。」は、お母さんと弟さんと肩を並べてご覧になっていたという。ご家族からの反響も、制作者の喜びの一つ。
「マルモのおきて」はまた雰囲気の違ったドラマでした。橋本のさんが書かれていた番組ブログ「Fの世界」からも、その楽しさが伝わって来ました。
“犬がしゃべって、笑って泣ける。”そんなドラマを「絶対彼氏」を制作していた頃に何となく思いついて…。
思いついたらどうしてもいつかやってみたくて、社内で企画募集があるごとにその企画案を出し続けていました。
当初はラブコメ的なストーリー構想でした。
なかなか通りませんでしたが(笑)。「フリーター、家を買う。」の制作を終え、次にまた同じスタッフで連続ドラマを作る機会をいただきました。
そこで、「犬がしゃべる」ドラマをやってみようかということになり、どんな物語にするか一から話し合いました。
はじめは「家なき子」の様に子供が犬と旅をするシリアス路線のドラマ案などもあったのですが、局のプロデューサーや脚本家さんや監督など
みんなで色々な意見を交わし打ち合わせを重ねていくうちに、最終的に「笑って泣ける」癒し系のホームコメディをやろうということになりました。
そして、阿部さん、愛菜ちゃん、福くん、比嘉さん、世良さんなど素敵なキャスト陣も決まっていきました。

「マルモのおきて」は、実は東日本大震災の2日後にクランクインし、
みんながそれぞれ不安やストレス、そして撮影を続けていていいのかというジレンマを抱えていたと思います。
それでもスタッフ・キャストが、この番組を信じて、毎日時間に遅れることなく元気に現場に集まってくれました。
そんなみんなの姿に自分もとても勇気づけられました。
そうやってみんなで作った番組が、被災地の方からも「明るい気持ちになれた」「元気が出た」という声をいただいて、
我々が逆に励まされた気がしました。
そんな風に、一緒に色んなことを乗り越えてきた現場だから、制作現場もとても仲良く明るかったですね。
現場は笑い声が絶えなかったです。その様子が、番組公式ブログからも伝わっていたと思います。
出演者の方々も積極的にブログに掲載する写真に写ってくださったりもしました。

ブログがあることで書き込みによって視聴者の方々の声も届きますし、ブログを通して少しでも番組を身近な存在に感じてもらえたらと思っています。
このシーン1つ作るには、実はこのセクションのスタッフがこんな苦労をしています、こんな思いを込めてます、
ということを断片的にでも伝えることができればといつも思います。
エンディングのスタッフクレジットで文字として肩書きや名前が出るだけじゃなく、実際にそれぞれのセクションがこんな役割をしています、という、
そういう現場の温度みたいなものが視聴者の皆さんに伝わることで、作品が放送されるだけでなく、さらに立体的になるというか、
深みが加わるというか、視聴者の方々から見た距離感が近づくというか、そんな願いを込めながらいつもブログを書いています。
同時に、ブログへの書き込みを見ながら色々なことに気づかされ、私自身も勉強させてもらっています。
仕事を離れれば主婦としての一面を持つ橋本さん。結婚してからの方が時間の使い方が上手くなったと仰っていた。旦那さんと一緒に晩酌しながら語らうことが、一番のリフレッシュになるそうだ。
最後に今後の目標を教えてください。
この仕事を始めてからようやく10年目になりましたが、最初の5,6年は本当に辛いこともいっぱいありました。
その当時の、ほとんど殴り書きに近い日記を読み返すと「こんなこと書いてたんだぁ」と、今思い出せば笑ってしまうんですけどね(笑)。

何事も続けていく中では、辛いことや物理的にどうしようもなくなってしまうこともあると思います。
でも、暗中模索しながらもその時々でまずは目の前の求められたことに必死で向き合って応えようとしているうちに、どこかが開けてくることがあると思うんです。
それが当初思ってもいなかったような道だったとしても、開けた道が自分に向いている道の場合もあるかもしれないですよね。
私の場合は、ずっとこの仕事をやり続けたことで、10年前には気付けなかったようなこと、考え方や見方や思いをさらに知ることができました。
続けたことが、確実に今の自分の力になっていると思います。この次の10年を思うと、きっとまだまだ新しい発見があるのではという気がしています。

テレビを取り巻く環境も日々変化していますので、この先も映像コンテンツの“出口”は多種多様に増えていくのだと思います。
我々制作側は、その変化にどう対応するべきかも考えなくてはいけませんが、テレビの力ってまだまだ大きいと思います。
“おもしろいと思えるもの”がそこにあれば、そこに人は集まってくるんじゃないかと、まだまだ信じたい気持ちがあります。

今まで通り「これを伝えたい」という“核”を大事にするとともに、「いかに楽しんでもらえるか」という両方のポイントを忘れずにこれからも作品を作っていきたいと思います。
プレッシャーが全くないと言えば嘘になりますが、あまり気負わず、自分に嘘をつかずに、これからもちょっとずつ楽しんでやっていけたらと思っています。
取材・文 町田弘行
橋本芙美さんの第26回ATP賞テレビグランプリ2009新人賞受賞者インタビューはこちら
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